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活動記録>平成24年度行政視察 2月1日(水)
■平成24年度 行政視察

景観計画について

  
研修視察日 平成24年2月1日 10:00〜11:30
視 察 先 鹿児島県出水市
報告書提出者 西田 剛
景観計画の目的
 出水市には、国の重要伝統的建造物群保存地区である出水麓伝建地区をはじめとした歴史的街並みや、ツル及びその飛来地など、歴史や自然の貴重な景観があります。このような景観は、暮らしに潤いと活力を与え、住民の地域に対する愛着や誇りを醸成するとともに、観光資源としても、後世に伝えていくべきものであるといえます。
 出水市では、これまで「出水市総合計画」などの計画に基づき、景観に配慮した公共施設の整備、環境美化の活動、歴史的街並みの保存、鶴の保護活動などを推進されてきましたが、市全体としての景観づくりの目標や指針はなく、具体的取り組みは十分ではなかったようです。
 そこで、出水市では、景観法に基づく様々な仕組みを活用し、出水市らしさを活かした美しい景観づくりを積極的に推進していくため、平成13年3月13日に景観行政団体となり、このたび出水市景観計画を策定し、出水市景観条例を制定されました。
 この景観計画に基づき、景観法に規定された制度の活用や、景観計画に位置付けられた景観に関する他の法律(都市計画法、屋外広告物法、文化財保護法など)の活用を中心に、出水市の実情に応じた景観づくりを図っているところである。
出水市の概況
 出水市は、平成18年に出水市・高尾野町・野田町が合併して誕生した鹿児島県北西部の「北薩地域」に位置する人口約57,000人、面積330,06Kuの都市である。市の大半は山地と扇状地で、北部は八代海に面し、東部・南部は山々と扇状地があり、中央の開けたところに出水平野が広がります。
 農林業は、平地を利用した稲作、山の斜面を利用したみかん栽培、植木・苗木の生産が盛んである。
水産業は、近海漁や海苔の養殖が盛んである。製造業は、焼酎等の地場産業とともに先端技術産業が進出している。また、商業は、各地区に商店街が形成されているものの、郊外の沿道への新店舗進出が相次いでいる。産業全体では第3次産業が中心である。
 交通は、国道3号などの主要な幹線道路が整備されており、南九州西回り自動車道の整備も計画されている。また、九州新幹線(出水駅)、肥薩おれんじ鉄道が整備されており、広域的な交通体系が整いつつある。
景観の概況
 出水市には、八代海や山並み、田園風景や、出水麓伝建地区の歴史的街なみなど多くの美しい景観がある。それらの景観は、自然の織り成す風土、人の生業や歴史、現在の人々の生活が古代から現代までの時間の中で複合的に重なり合ってつくられている。
 一方、自然の中に投棄されたゴミ、農業の衰退による耕作放棄など生業の衰退による景観の悪化、歴史的街なみにある空家、広告物等による雑然とした沿道などが各地で散見され、景観上問題となっている。
なぜ景観づくりが必要なのか
・出水の美しい景観は、まちへの愛着や誇りを育む
・魅力あるまちに住むことは、毎日の暮らしを楽しくする
・景観をみがくことは、観光や文化の活性化につながる
・景観づくりに多くの人が関わることは、地域づくりにつながる
景観づくりの課題
出水市の景観特性と問題点を踏まえ、景観づくりの課題を設定する。
1. 豊かな自然景観の保全
・ 多様な手段による景観阻害要因の解消
・ 視点場からの雄大な眺望景観の保全
2. 出水市を特徴づける景観資源の保全と活用
・ 出水麓伝建地区の景観資源の保全と観光活用
・ 野田郷区域の景観資源の保全
・ ツル飛来地関連の景観資源の有効活用
3. 生活にうるおいを与える景観づくり
・ 身近な景観の保全と形成
・ にぎわいある商店街景観の再生
・ 生活環境と調和した歴史的街なみの保全
4. 人が行き交う場にふさわしい景観づくり
・ 地域特性を感じられる沿道・沿線の景観整備と維持管理
・ 出水市の玄関口(出水駅前〜商店街〜伝建地区)にふさわしい連続した景観づくり
5. 景観づくりの取組み支援
・ 景観づくりの意識啓発・意欲保持
・ 情報共有の仕組みづくり、協議する場づくり
・ 景観づくりの取組みへの継続的な支援
景観計画の主な内容
・ 景観計画区域及び景観づくりの基本方針
・ 届出制度に関する事項
・ 景観重要建造物及び樹木等に関する事項
・ 景観形成重点区域に関する事項
・ 景観づくりの推進
景観計画に対する市民の意識について
○ 市民アンケート調査(H20.7)実施
  20歳以上2,500人 回収829(33.2%)
 ・ 身近な景観に対して約8割の方が満足しており、全体的に問題意識は高くない。
 ・ 歴史的建造物群保存地区である出水麓地区や野田郷区域については、武家屋敷や歴史的街なみといった
  地域のシンボル的景観があり、住民の意識も高い。
 ・ 自然景観、歴史的景観について市民の満足度は高い。
 ・ 寂れた商店街の景観や沿道の伸びた草やゴミなど好ましくないと考える人が多かった。

○ 景観計画・景観条例に基づく届出制度
 景観計画・景観条例は平成22年4月より施行され、周知期間を経て、届出制度の部分については10月から施行している。
 現在まで、平成22年度は20件、平成23年度は14件(1月末現在)の届出及び通知がなされており、制度及び景観形成基準について周知されつつある状況であると思われます。
 届出対象行為は、事前協議等により景観形成基準に適合することを求めておりますが、計画自体が緩やかな規制・誘導を目的にしていることから、現在までに指導、勧告等を行う事例はなく、協力が得られているところであります。
 申請者は企業が主であることから、業者への周知はだいぶ図られてきましたが、個人に対しての認知度はまだ高くないのではと考えられます。

○ 今後、景観に関する情報提供や、市民が参加しやすい景観づくりの活動等の啓発活動を進めていく必要がある。
現状の課題について
・ 景観法に基づく届出制度について、出水市の景観計画において、届出対象行為である建築物及び工作物に
  係る「大規模な修繕、外観の模様替え又は色彩の変更」について、「主要構造物のうちそれら行為が過半を
   越えるもの」としていることから、過半を越えないものについての対策を検討する必要がある。
・ 全国展開している店舗等の意匠の問題
・ 屋外広告物の表示及び掲出に関する事項の充実等
・ 神社仏閣等の伝統的な様式による建築等への適用除外
今後の取組について
・ 景観法に基づく届出制度の円滑な運用
・ 市民・事業者に対して景観に関する意識を高めるための取組み
  (出前講座、景観100選等)
景観の将来像
 日本中からありふれていたはずの「ふるさと」の風景が消えてゆきました。でも、出水には、やさしい緑の山並み、ツルが訪れる田園、穏やかで美しい海が、市民の手で残されています。
 玉石垣や生垣が続く街なみには、薩摩の歴史と、それを受け継ぐ人々が営む落ち着いた暮らしが息づいています。小さな商店街には、歴史とぬくもりが満ちています。いつでも、どんな人でも「かえって」くることができます。
歴史に満ちたふるさとでありつづける鶴のまち出水

● 感想
 我が草津市における景観条例を制定するため、鹿児島県、出水市での景観条例を参考にすべく研修に伺いましたが、そこで、改めて「景観」とはどういうことなのか、景観の定義とは何であるのかについて考えさせられました。
 
 「出水市というまちには、歴史がある、人の温もりがある。
四季折々の風景の中には、ひとつひとつの物語が秘められている。
何度訪れても、いつも新しい美しさが待っている。
だから、鶴もやってくる。人も集まる。」

 まさしくこの文言通りの素晴らしいまちでありました。
 草津市と比較すると、出水市は、昔からの武家屋敷(歴史的建造物等)が数多く現存しています。道路交通網においては、使用する部材に配慮し、電柱が道路側にはみ出し交通の妨げにならぬよう、ほとんどの電柱がそれぞれの土地所有者の理解によって特段の配慮が施してあります。
 また、鶴の飛来地で、毎年10月中旬〜3月下旬に渡り、約7種類の鶴を見ることができます。本年度は約13,000羽余りの鶴がこの出水市で羽を休め越冬しているとお聞きしました。
 研修後議会事務局職員様に、実際にまちの佇まいと鶴の飛来地として設置してある観察所へ案内をして頂き、新しいものを上手く取り入れながら、決して大切なものを壊さず、邪魔をせず、といったまちづくりをされていることを実感したところであります。
 研修の中で、近代的なものについて確認できましたのは、九州新幹線駅が設置されたということと、NECとパイオニア両大手企業が撤退したことくらいでした。
 草津市と明らかに違うのは、出水市は、古き時代から先人から受け継がれてきた数多くの財産をみんなが協力し合い、大切に守り育ててきた経緯があり、決して時代の流行に乗せられることなく、追いかけることなく、「自分たちのまちはこうあるべきだ」という確固たる強い想いが今日まで維持されているということ。
 一方草津市は、出水市とは関西、九州など、それぞれの立地条件が異なることから、すべてを同じ条件で考えることは難しいが、それでも草津市についても、古くからの良き時代にあった沢山の財産があったのにも関わらず、より新しいものを追いかけることにより、その財産を惜しげもなく破壊し、その結果が今の、何処にでもあるような何の特徴もないまち並みになってしまっています。
 ここにきて、草津市は何を目標に、どんなまちの姿を思い描き、景観条例を制定しようとしているのでしょうか。
 景観の現状維持を目的とする条例制定ならほとんど意味はありませんし、例えば、宿場町としてふさわしいまち並みに作り変えて行こうとするのか、更に、未来的なまち並みを作っていこうとするのか。
 条例制定後、現状の姿を考えているまちの姿に変更していく行動を起こしてこそ意味があると強く思います。
 そもそも論、ビジョンが見えてこない。
 すぐにパブリックコメントという手法を用いて、「市民がこのように選択したからこうします」みたいな、そこに作っていく側の想いがない、つまらない取組みで何の効力もない、意味もない、未来もない条例を作って欲しくはありません。
 我々議会としても、景観だけではありませんが、特に、議会から提案する条例を制定するにあたり、「世間の勢いや、風潮によって、草津市も、議会もとりあえず作らないといけない」というような動きを止めなくてはならないと考えます。
 条例制定することによって、その通りに進んでいく、また、出来るという思い込みと錯覚を根本から直さないといけないと切実に思います。
 「何故必要なのか、しっかり中身のある議論をし、あーそうなんやと皆が理解できる必要性と、あるべき姿(ゴール)を作り出す」。こんなことも解らない状況で物事を作ることは非常に危険であると考えます。議員である前に、社会人として当然の考え方だと断言したい。
 会議体として、議員としてどうあるべきか、議会としてどうあるべきか、何故出来ないのか、しようとしないのか、解らないのか、知らないのか、興味がないのか、これらのことは以前から思っている疑問であり、今回出水市を視察研修して、そのことについて更に強く感じました。
 当然これらのことは、議員だけではなく、市政を運営していく関係者にも当てはまることであります。
 最後に、今回の研修で、出水市は「歴史を継承し、新たな活力を生み出す、温故知新の景観まちづくり」を目標とすると説明された上で、「出水市さんは、このまちの将来について景観を守るという観点から、新幹線駅設置に伴い、市の発展や、健全な市政運営をするための財源確保を考えると、雇用拡大等の課題や、それらによる企業誘致あるいは建築構造物等に係る、避けては通れない多くの課題・問題がこれから出てくると考えるが、それらを含め、出水市の将来像について、本条例の目標とするところとの整合性をどのようにお考えですか?」と質問を致しましたところ、出水市さんからは、困った顔をされ、明確な答弁を得ることはできませんでした。
 物事の構築は難しいですね。

報告者 西田 剛
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