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活動記録>平成25年度行政視察 2月8日(金)
■平成25年度 行政視察

景観まちづくりについて

研修視察日 平成25年2月8日(金) 9:30〜11:30
視 察 先 福岡県八女市
受入担当者

八女市建設経済部 都市計画課課長 末次隆治氏
八女市建設経済部 都市計画課係長 松尾典子氏
八女市建設経済部 都市計画課    古賀美啓氏

草政会

中島一廣、清水正樹、竹村勇、奥村次一、
行岡荘太郎、西田剛、棚橋幸男、中嶋昭雄、
瀬川裕海

●視察のねらいと概要
 八女市は「市民とともに景観まちづくりを推進する」ことを理念に、景観計画を策定されており、八女福島地区にあっては、平成20年度の美しいまちなみ優秀賞を受賞されるなど、高い評価を得られています。本市も、市民との協働による景観施策を進めていることから、先進事例として、視察を行いました。 視察を通じて、市民の景観形成に対する意識の変化が印象的であり、事業の重要なファクターは市民の参画意識の高揚であると感じました。実際に、現地を見学しますと、歴史に裏づけされた重厚な街並みが保存されており、本市においても、本市の特色ある景観保存の必要性を感じたところでした。地域の特性を活用した景観形成は、まちづくりや、シビックプライドの醸成、また市民協働の実現にも大きく貢献するものであり、八女市のような先進事例によく学んでいくべきだと考えたところです。
 具体的な事例の経緯や背景、取り組み内容、また、今後の草津市の取り組みを含めた所感は以下のとおりです。
●景観計画策定の背景と経緯について
 八女市は城下町として栄え多くの特産品の開発やそれを素材にした工芸品の創作に取り組み、農産物の生産・流通の拠点であることに加え、積極的な商工業の振興による富の蓄積で重厚な商家が連続する町並みを形成していった。
 明治に入っても往還道路沿いの町並みは依然として中心街として栄えてきたが、徐々に近代化の洗礼を受けることとなった。中心街を四角に囲む環状線道路の完成などにより、車中心の町の骨格が形成された。
 こうした都市構造の変化は、商店街が立地する中心部から商業機能を環状線道路沿いにシフトすることとなった。中心部の町並みは、商業機能は失ったものの戦災やモータリゼーションに伴う開発などから免れて、現在でも伝統的町家が多く残っている。
 これらの存在は中心市街地の個性ある固有の景観をつくりだす貴重な歴史的文化遺産となっていることから、景観計画を策定し、中心市街地の活性化にも役立てている。
●八女福島地区のまちなみ整備に係る背景と経緯について
 市民が八女福島の町並みの価値に気づくきっかけとなったのは、昭和63年に「旧木下家住宅」が市に寄贈され、修理、復元されたことや、平成3年の大型台風によって被害を受けたことが要因として挙げられる。
 伝統的町家が取り壊されて、空き地になるなど、町並みが歯抜け状況になるのを見て危機感を感じた市民有志が、勉強会を重ね平成5年にまちづくり活動を展開する市民団体「八女・本町筋を愛する会」を発足させ、「八女町屋まつり」が取り組まれた。この影響で八女福島の町並みに市民や観光客の関心が向けられるようになった。
 町並みを保存活用する市民のまちづくり活動の気運に応えて、平成5年から市は、住民の理解と協力のもとに建築物等の修理・修景事業や住環境の整備を行うために、国交省の「街なみ環境整備事業」の導入を検討し始め、平成7年には事業をスタートさせた。平成9年5月には町並みの情報発信の拠点、そして市民の交流の場として造り酒屋跡を買収整備し「横町町家交流館」を開館した。
 事業導入に先立って平成6年には事業対象地区の住民によって「景観のまちづくり協定」が締結され、「八女福島伝統的町並み協定運営委員会」が組織されている。
   
 徐々に保存整備の成果が見えてくるにつれ、町並みを歴史的文化遺産として後世に残し伝えていくため、建築物等の修理・修景事業に対して、長期に継続して国の支援制度が受けられる文化庁の「伝統的建造物群保存地区制度」を導入できないか、検討するに至った。
 平成11年市商工観光課に特徴あるまちづくり係を設置し、町並みを活かしたまちづくり事業を一本化し、予定保存地区内の住民の合意形成を具体的に取り組み、平成13年6月に「八女市文化的景観条例」を制定し、12月末に保存地区の都市計画決定を行い、伝統的建造物群保存地区制度をスタートさせるとともに、平成14年5月に国の「重要伝統的建造物群保存地区」の選定を受けることが出来た。
●住民の景観に対する意識の醸成のための取り組みとその成果について
 建築行為へのルールづくり(高さは二階建てまで、構造は木造)を行い、町並みの文化的景観を半永久的に維持しなければならない。街なみ環境整備事業の実績があり住民意識は少しずつ向上していたし、さらに、市民活動の活発化などでリーダーたちが先導役を果たしてくれ、1年間を超える住民組織と行政の一致協力した取り組みの中で、80%に近い住民同意を得ることが出来た。
●八女福島地区のまちなみ整備に係る住民と行政の役割分担と連携の手法について
 平成12年伝統技法を駆使した町家の構造等を学び、地元建築士の立場から町並み保全のあり方を考え、本物を残していくために「NPO八女町並みデザイン研究会」が発足し修理・修景事業等の相談活動をはじめ、その事業実施にあたっての設計監理及び施工を担当し、現場での技術者・技能者の研修会を行い、技術の向上・継承に努めている。また、小学生の社会学習の一環として、町家の修理現場で土壁塗り、土間のたたき締めや外壁のべんがら柿渋塗り等の体験学習など、積極的な取り組みが展開されている。
 中心市街地の空洞化に拍車をかけている空き町家の解消に向けて平成15年「NPO八女町家再生応援団」が発足し、空き町家の斡旋活動を開始した。それを受けて、平成16年町並み協定運営委員会は、町並みに関係するまちづくり団体に呼び掛け「八女福島空き家活用委員会」を立ち上げ、情報の共有と斡旋を含めた保存活用に力を入れている。借り手の空き家の活用内容は、飲食店が多いが、ここ数年でギャラリーや工房など様々なショップの開店にこぎつけ、地域との連携を強めながら少しずつ実績を上げている。
 修理・修景に対する経費の補助は「修理基準」「修景基準」に基づく事業に対して「八女市街なみ環境整備事業補助金交付要綱」により必要な補助を行っている。
●今後の課題と展開について
 一番の課題は、技術者の確保である。特に修理・修景事業の場合は、床下や小屋裏に潜るなどしてきちんとした履歴調査と基準に基づいた設計や施工が必要であり、それを業とする建築士や大工・左官などの職人さんの育成がますます重要になってきている。
 二番目は賑わいを取り戻していくソフトの構築である。中心市街地の空洞化は深刻になっている。特に空き家、空き店舗の数は既にかなりの数がある。その中で、町家の所有者で地元を離れ遠くに住んでいて帰ってくる見込みの無いケースの場合は、建物の維持管理が出来ないため、解体し更地にして売却を希望するケースが多い。住民と行政が連携し、所有者と借り手や買い手へサポートしていくシステムの構築を推進しなければならない。
 また、商店街と町なみ保存地区のリーダーが、日常的な意見交換を含めたコミュニケーションの場を作り、継続的に活動の輪を拡大していく必要性が高いことから、複数のNPO組織の発足を目指している。
 三番目は伝統地区の周辺や市全体の文化的景観をどう育てていくかである。2005年全面施行となった「景観法」を追い風として、地域固有の景観を守り、創造しなければならないと考えている。循環型の地域社会づくりというキーワードを市民と行政が共有し、専門家のサポートも受けながら、文化的景観を市のブランドに高めていくという長期戦略を描き、着実に実践していけば生業も循環型(建築物等の材料、技術者、職人などを地域でまかなっていく)で定着していくものと思われる。そうなれば多くの市民の支援を得やすく、50年、100年というスパンでの持続的かつ効果的な施策として展開できるものと思われる。
 複雑で困難な課題が山積みしているが、常に市民と行政が「響き合う協働のまちづくり」を意識しながら、外からのサポーターの参画を積極的に受け入れて、八女の魅力をより輝かせる取り組みを追及していくことが、八女福島のまちづくりの原点である。
● 所 感
 今回、景観まちづくりについて八女市を訪問し、八女市福島地区の景観まちづくりについて説明を聞いた後、現場視察も行いました。八女市は城下町として栄え、本市は宿場町として栄え、共に交通の要所であったが近年の都市構想の変化により、郊外型のまちへと変化してきています。かつての町並み保全と中心市街地の活性化は両市にとって大きな課題である。八女市と本市の違いは、八女市の景観まちづくりは市民から声があがり行政を動かし市民主導である事、町並み保全の補助金もすでに25年度分まで食い込む勢いです、また、観光客のリピーターも多いとのこと、など統一感のある景観まちづくりでありました。
 本市においてもこれらを参考に、市民主導のまちづくりの啓発、草津らしさを前面に出せるような景観まちづくりを推し進めなければならないと感じました。
 とりわけ、現在、本市では今後の草津市を大きく左右する中心市街地活性化と草津川跡地利用に取り組んで行こうとしている時です。双方の事業に共通する「賑わい」創出に向けて、今回の視察は非常に参考となるのではないでしょうか。市民主導という事業スタイル、宿場町として栄えたという歴史的背景や、町並み保全と活性化の両立という目標像は本市の目指すべきモデルの好例であります。
 活性化の拠点づくりという「点」を結びつけて「線」とするためには、統一感のある町並み形成が不可欠です。こうした「点」や「線」を早急に実現していけば、多くの人が集い、賑わいを創出する空間の実現、つまりは「面」の実現が叶うものだと思います。
 今後も、中心市街地活性化と草津川跡地利用に今回の研修で学んだことを活かしていきたいと思います。


報告者 瀬川裕海
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